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オリジナルビールへの道~5~ビールの苦味と香りの設計:ホップのα酸と煮沸のこと

齋藤です。

今日は工場休業日。店舗も相変わらず休業が続いていてトピックも無いため、オリジナルビールへの道行ってみます。

前回、ビールの苦味について書きましたが、今回は、その苦味をどう設計するか、ということについて、また、苦味をつけるホップにはもう一つの香りづけの役割もあり、それらをわかりやすいイメージでお伝えできれば、と思っています。

ちなみに、画像は限定ビール「玄ちゃんの一撃」。これまで澄川麦酒で醸造した限定ビールの中で最もIBUが大きいものです。ちなみに、IBUは73。なかなかにガツンときますね。



ばず、前回の続きでIBUのこと。これはホップに含まれるα酸という成分量がわかれば計算で予測値を出すことができます。

数値を出す計算式は、

IBU = ホップのα酸(%) × hopの重量(g) ×  1.65 × ( 0.000125 ^ (麦汁の比重-1) ) × (1 - e^ ( -0.04 × 煮込み時間(m) ) )/ 4.15 × 10 / 麦汁量(ℓ)

ってことになるようですが、よくわからないですよね(笑)。

ここでキーワードになるのが、「ホップのα酸」です。



α酸はフムロンとも呼ばれますが、この値は、ホップの毬花に対するフムロンの割合を%で示します。ざっくり簡単にいえば、この数値が大きいほどフムロンをたくさん含んだホップというイメージで良いでしょう。

このフムロンを麦汁に抽出してやればビールに苦味がつくわけですが、このフムロン、液体に溶け込みづらい性質を持っています。つまり、ホップを麦汁でうるかすだけでは苦味成分は溶け出しません

どうするか。

ご存知の方も多いと思いますが、煮沸の工程でホップを投入します。フムロンは煮沸することにより、イソフムロンという成分に変換されますが、このイソフムロンは麦汁に溶け込みます。これでビールに苦味がつくわけです。



カンの良い方はなるほど!とお気づきになったと思いますが、ビールの煮沸工程において、

 ・α酸の高いホップを使うほど苦くなる
 ・煮込み時間が長くなるほど苦くなる

ということなのです。

これを数値化すると、先程の計算式、

IBU = ホップのα酸(%) × hopの重量(g) ×  1.65 × ( 0.000125 ^ (麦汁の比重-1) ) × (1 - e^ ( -0.04 × 煮込み時間(m) ) )/ 4.15 × 10 / 麦汁量(ℓ)

となりまして、この数字が大きいほどビールの中に溶け出したイソフムロンがたくさん含まれている(=苦味成分がたくさん溶け出している)ということになります。

なお、前回も書きましたが、あくまでもこの数値はビールの中に溶け出している苦味の量なので、人が感じる苦味そのものには直結しません。ビールの持つ甘味などの相関関係で最終的に飲み手が感じる苦さとなる、ということをあらためて覚えていただけると良いかと思います。



ところで、ホップには苦味の成分の他に香りの成分を持ち合わせています。

こいつは、煮沸すると揮発して無くなってしまいます。

ホップは苦味をつけることも目的ですが、ビールに香りをつけることも大切な役割。

そんなこともあり、澄川麦酒では、通常、ホップを3回に分けて投入しています。



ざっくりとしたイメージにはなりますが;

一回目
は煮沸工程直後。これは基本的には苦味をつけるためです。

二回目は煮沸終了15分前。これは、フレーバリングとも呼びますが、程よい苦味とアロマ成分を抽出して揮発させ過ぎないタイミングに投入することによりビールの後味を造ります。

三回目は煮沸終了5分前。これはアロマリングとも呼びますが、ホップのアロマ成分をほとんど揮発させずに残す事により、ビールの香りを特徴づけます。

という感じです。



この他にも、ホップのアロマ成分を取り出す手法として、ワールプールホッピングやドライホッピングなどのやり方があり、ビールのスタイルによってあれこれと使い分けています。

なるべくホップの苦味と香りの抽出についてイメージしやすいように書いてみたつもりですが、さてうまく伝わったでしょうか。。。

次回は、ビールの香りを決めるもう一つの要素、イースト(酵母)について少し触れていきたいと思います。